定款の作り方

株式の譲渡制限とは 定めるメリット・承認の手続き・相続のときの注意

監修:行政書士 渡邉 徳人

中小企業の株式会社のほとんどは、定款に「株式を譲るには会社の承認が要る」という定め(株式の譲渡制限)を入れています。この定めがあると、知らない人が株主になるのを防げるだけでなく、役員の任期を10年にできるなど、会社の運営も楽になります。定めるメリット、定款の書き方、譲りたいと言われたときの手続き、相続のときに気をつけることをまとめました。

この記事のポイント

  • 株式の譲渡制限は、株式を譲るときに会社の承認を要するとする定款の定めです。
  • すべての株式に譲渡制限がある会社は、役員の任期を最長10年にでき、取締役会を置かなくてもよくなります。
  • 譲りたいと言われたら、会社は2週間以内に承認するかを知らせます。知らせないと承認したものとみなされます。
  • 相続で株式が移るときは承認が要らないため、必要なら売渡請求の定めを考えます。

株式の譲渡制限とは

株式会社の株式は、本来は自由に人に譲れます。そこで、会社の知らない人や、取引上つきあいたくない人が株主になるのを防ぐため、定款で「株式を譲って取得するには、会社の承認が要る」と定めることができます。これを株式の譲渡制限といい、登記もされます。

すべての株式に譲渡制限がある会社を、会社法では「公開会社でない会社」(非公開会社)と呼びます。上場していない中小企業の多くが、この形です。

定めるメリット

譲渡制限がある会社でできること
  • 知らない人が株主にならない:会社が認めない人に、株式が渡るのを防げる
  • 役員の任期を10年に:取締役・監査役の任期を、定款で最長10年まで延ばせる
  • 取締役会が要らない:取締役1人でも会社を作れる
  • 取締役を株主に限れる:取締役を株主の中から選ぶと定款で決められる
  • 株主総会の招集が簡単:招集の通知を、原則1週間前までにすればよい
  • 監査役の範囲を絞れる:監査役の仕事を会計に限ることができる

定款認証の手数料が1万5千円になる条件の一つ(取締役会を置かない)も、譲渡制限があって初めて選べる形です。

定款の書き方

定款には、たとえば次のように書きます。承認する機関は、取締役会を置かない会社なら株主総会、取締役会を置く会社なら取締役会が原則です。定款で、代表取締役などを承認する機関にすることもできます。

定款の書き方の例
  • 取締役会を置かない会社:「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。」
  • 代表取締役が承認する形:「当会社の株式を譲渡により取得するには、代表取締役の承認を受けなければならない。」

「株主どうしで譲るときは、承認したものとみなす」と書いておくこともできます。一部の種類の株式だけに譲渡制限を付けることもできますが、その場合は非公開会社にはなりません。

譲りたいと言われたときの手続き

株式の譲渡の承認の流れ
  1. 1
    承認の請求を受ける株主か、株式を取得した人から、誰に何株を譲るかを示して請求を受ける
  2. 2
    承認するか決める定款で決めた機関(株主総会・取締役会など)で決める
  3. 3
    2週間以内に知らせる請求の日から2週間以内に、結果を請求した人に知らせる
  4. 4
    承認しないとき請求で求められていれば、会社か、会社が指定した人が株式を買い取る

2週間以内に知らせないと、承認したものとみなされます。買い取る値段は話し合いで決め、まとまらなければ裁判所に決めてもらうこともできます。

相続のときに気をつけること

株主が亡くなって相続人が株式を受け継ぐときや、会社の合併で株式が移るときは、「譲渡」ではないため、会社の承認は要りません。そのため、会社と関わりのない相続人が株主になることがあります。

これに備えて、定款に「相続などで株式を取得した人に、会社へ売り渡すよう請求できる」という定め(相続人等に対する売渡請求)を入れておく方法があります。請求は、相続などがあったことを会社が知った日から1年以内に、株主総会の特別決議で決めて行います。

売渡請求の定めを入れるときの注意
  • 社長の相続でも使われる:社長が多くの株式を持ったまま亡くなると、ほかの株主がこの定めで相続人に売渡しを求めることがある
  • 相続人は決議に加われない:請求を受ける相続人は、その決議で議決権を使えない
  • 買い取る資金が要る:会社が買い取るため、会社の財産から払える範囲に限られる
  • あとから入れるとき:設立のあとに定款に入れるには、株主総会の特別決議で定款を変える

売渡請求の定めは、会社を守ることにも、思わぬ形で経営が変わることにもつながります。入れるかどうかは、株主の顔ぶれや事業の承継の計画にあわせて、専門家と相談して決めましょう。

あとから譲渡制限を付けるとき

設立のあとに、すべての株式に譲渡制限を付けるときは、株主総会で、議決権を使える株主の半数以上が出席したうえで、その議決権の3分の2以上の賛成が要ります(特殊決議)。反対した株主は、会社に株式を買い取るよう求めることができます。定款の変更とあわせて、変更の登記もします(登録免許税3万円)。

株式の譲渡制限を含めて、定款の作成や見直しを相談できる専門家は、このサイトの地図から探せます。定款全体の作り方は「株式会社の定款の作り方」、役員の任期は「役員の任期が来たときの手続き」で紹介しています。

出典:会社法(第2条第5号・第107条・第108条・第116条・第136条〜第145条・第174条〜第177条・第299条・第309条・第327条・第331条・第332条・第389条・第461条・第911条)、登録免許税法別表第一

よくある質問

株式の譲渡制限とは何ですか?

株式を譲って取得するには会社の承認が要る、と定款で定めることです。会社が認めない人が株主になるのを防げます。

譲渡制限を付けると、どんなメリットがありますか?

すべての株式に譲渡制限がある会社は、役員の任期を最長10年にでき、取締役会を置かなくてもよくなるなど、会社の運営が簡単になります。

株式を譲りたいと言われたら、会社はどうしますか?

定款で決めた機関で承認するかを決め、請求の日から2週間以内に知らせます。知らせないと承認したものとみなされます。

相続で株式が移るときも、会社の承認は要りますか?

要りません。相続は譲渡ではないためです。備えるなら、定款に相続人等に対する売渡請求の定めを入れる方法があります。

あとから譲渡制限を付けられますか?

株主総会の特殊決議で定款を変更すれば付けられます。反対した株主は株式の買取りを求めることができます。変更の登記も必要です。

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